海賊対策
海賊対策
近年、海賊及び船舶に対する武装強盗事件は世界的に増加の一途をたどり、IMB(国際商業会議所国際海事局)によると、平成12年には過去最悪の469件を記録した。
平成13年は335件と前年に比べ約29%少なくなったが、ハイジャック型の海賊の発生件数は、平成12年の8件から16件に増加している。
また、発生件数を海域別にみると、インドネシアが91件(約27%)で最も多く、次いでインド27件(約8%)、バングラデシュ25件(約7%)、マラッカ・シンガポール海峡24件(約7%)、マレイシア19件(約6%)となっており、全体の約67%がアジア海域で発生している。
これは、船舶航行の輻輳海域であるとともに、海岸線の構造から、犯人側に地の利があることにもよる。
我が国は、食料やエネルギーなどの資源の大部分を輸入しているなど、我が国の経済や国民生活は国際貿易に大きく依存していると言える。
我が国の貿易取扱量の約99.7%は海上輸送により行われており、なかでも、アジア・中東地域との海上輸送量は、全体の約56%を占めている。
アジア・中東地域と我が国との間を航行するタンカー、コンテナ船等の貨物船は、海賊事件が多発しているマラッカ・シンガポール海峡やインドネシア海域を航行しており、これらの海域の海上交通の安全確保と治安の維持は、我が国にとって極めて重要でである。
最近の海賊行為は、船上での金品の強奪程度ではなく、船舶そのものを強奪し、積荷を売りさばいたり、船員を人質に取り、身代金を要求するなど、大胆なものとなっている。
特に日本船舶の場合、国内法の制限から、船員が武器を持っておらず、また、支払能力も高いことから、格好の標的ともなっている。
アジア地域で発生した海賊によって消息不明となった船舶や積荷が、後日第三国で発見されたり、これらの船舶の船名、船籍が変えられたりしている状況から考えると、海賊事件には、強奪した船の売却、船籍の変更、積荷の売却などを行う国際的組織が関与していると考えられる。
このように、国際的組織が関与していると思われることや、犯行後の逃走範囲も広域化していることが、海賊事件の犯行グループの摘発を一層困難にしている。
このような海賊事件に効果的に対応するためには、各国の海洋警察力の能力の向上を図るとともに、一国のみではおのずと限界があることから、アジア地域の各国の連携を強化する必要がある。
このため、海上保安庁では「アジア海賊対策チャレンジ2000」に基づき、東アジア各国との相互協力及び連携の推進・強化等を進めている。
その一環として、海上保安庁はアジアの地域に巡視船・航空機を派遣し、寄港国の海上警備機関との連携訓練や職員相互の意見交換を行っている。
また、海上保安大学校等への留学生の受入れや、海上犯罪取締り研修の開催等、アジア各国の海上警備機関職員の人材育成を図り、各国及びアジア地域全体の海洋警察力の向上を図るために積極的に協力している。
また、海賊の発生を防ぐ抑止力とするため、巡視船・航空機により公海上の哨戒活動を行うとともに、日本関係船舶との官民連携訓練を行っている。
さらに、我が国とこれらの海域を無給油で往復できる新型ジェット機の配備を平成13年度から4ケ年計画で進めており、平成17年春に、配備された。
海賊: 国連海洋法条約101条において定義されている公海上の不法行為のことをいう。
船舶に対する武装強盗: 沿岸国の司法管轄内における船舶、又は船舶内にある人、若しくは財産に対する不法な暴力行為、抑留、略奪行為、又はそれらに係る脅迫のことをいう。
「アジア海賊対策チャレンジ2000 」: 平成12年4月、アジア地域の15の国と地域から、26の海洋警備機関が参加して、東京で開催された「海賊対策国際会議」において、海賊事件に対する今後の取り組みについての指針として採択されたもの。各国海上警備機関間の相互協力・連携の推進・強化、海賊情報の迅速な交換の実施、海賊行為に対する取締りの強化、被害船舶・者に対する支援、専門家会合の継続的な開催などをその内容としている。
日本関係船舶: 日本籍船、及び日本の船会社が運航する外国籍船。
新規作成日:2005年6月3日/最終更新日:2005年6月3日