各管区
本項は 「海上保安庁パーフェクトガイド」掲載用として整理したものをもとに掲載しており、更新なき場合、2005年3月のデータにもとずいています。
また、掲載出版内容と異なる部分も多々あります。
新規作成日:2005年5月7日以前を最終更新日としているものは、準備資料のまま内容の更新がないことを示しています。
- 第一管区
第一管区が管轄る北海道は、隣国ロシアと海の国境を接する広大な国境海域を有しており、北方四島周辺海域及び宗谷海峡付近において、ロシア警備艇による日本漁船の被だ補・被銃撃などのトラブル防止のため、巡視船艇により常時監視活動を行っている。
冷戦時代には、だ捕や銃撃事件もしばし起きたが、近年では、ロシアとの連携も進んでいる。
海上保安庁とロシア連邦保安庁国境警備局との間では、平成12年9月に「日本国海上保安庁とロシア連邦国境警備庁との間の協力の発展の基盤に関する覚書」が署名され、被拿捕・被銃撃といった「緊張の海」は徐々に緩和され協力関係の構築段階にあると言える。
サハリン開発に伴う流出油事故対策や麻薬・拳銃等の密輸水際阻止のため、ロシアとの連携・協力体制の強化が図られている。
北海道周辺海域は、世界的な好漁場であるため、我が国をはじめ中国や韓国など外国の漁船による漁労が活発に行われており、第一管区海上保安本部では、このような事情を踏まえ、漁船海難防止と操業秩序維持への啓発活動や排他的経済水域における外国漁船の不法操業を防止するため、監視・取締りを実施している。
北海道の冬は大変厳しいものであり、海には流氷が押し寄せ、船体や灯台も風雪により凍り付くような環境の下においても海上保安業務を遂行するため、海上保安官は日夜努力を続けている。
また、海上保安庁の各管区の中で、唯一砕氷船を配備しており、氷海航路啓開も大きな任務である。
釧路海上保安部所属PLH01「そうや」
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根室海上保安部所属PS02「さろま」
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- 第二管区
東北周辺海域の治安を維持するため、巡視船艇・航空機による監視取締りを行っている。管区内の各港において、銃器・薬物事犯、密航事犯を積極的に取り締まり検挙するなど、我が国の治安を脅かす国際犯罪に対し、巡視船艇・航空機による洋上監視・警戒の強化や、外国から入港する船舶に対した立入検査などにより、不正な薬物・銃器や密航者の水際摘発を強力に推進している。
また、このような事犯は、暴力団や国際的な犯罪組織が関与することが多く、効率的な摘発に向けて、関係治安機関との連携強化を図っている。
三陸沿岸域では、潜水器を使用した悪質なあわび密漁事件が横行し、社会問題にもなっていることから、積極的な密漁取締りを行われている。
平成14年は、気仙沼、石巻では、密漁されたと思われるあわびが大量に発見され、青森、小名浜においては、あわびの密漁者を相次いで検挙している。
我が国の法秩序や安全を確保するため、領海内において不法行為を行ったり、正当な理由がなく領海に入域する外国船舶、我が国周辺海域において不法操業等を行う外国船舶の監視取締りを行うとともに、これら海域における不審船の監視警戒も行っている。
平成14年は、九州南西海域不審船事案に関連し、沈没した不審船の引き揚げ監視警戒のため、管区所属の巡視船、機動情報通信隊要員、国際捜査官を派遣している。
東北地方には、原子力発電所等の臨海重要施設が多く立地し、核燃料等の輸送船が多数入出港することから、海上紛争等が予想される場合において、巡視船や航空機によるこれら施設周辺海域の警備を実施しており、平成13年9月11日の米国同時多発テロ以降、さらに厳重な警備体制にて不測の事態に備えている。
このような状況下、平成14年は、日韓合同のワールドカップサッカー大会が宮城県でも開催され、シージャックや爆破等のテロ、フーリガンによる暴動等の発生も懸念されたことから、第二管区2002年ワールドカップサッカー安全対策本部を設置するとともに、仙台検疫所、フェリー会社と連携のうえ、事前にフーリガン等を鎮圧するための訓練などを実施した。
また、開催期間中はフェリーへの警乗や臨海重要施設の警戒を強化している。
八戸海上保安部所属PL118「しもきた」
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青森海上保安部所属PM23「おいらせ」
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- 第三管区
第三管区海上保安本部では、関東・静岡地区沿岸から伊豆諸島・小笠原群島の周辺海域に至る海域での海上犯罪の監視・取締りを担当している。
第三管区では、東京湾における航行安全と環境・防災にかかる業務を行っている。
中でも、浦賀水道航路は、全国有数の船舶輻輳海域でもあり、新しい技術を使用し、海上交通安全に取り組んでいる。
第三管区海上保安本部では災害が発生した場合、付近を哨戒中の巡視船艇や航空機を発動させ、被害状況調査や救難活動、緊急時避難対策、付近航行船舶への航行警報を行う。
巡視船艇は、事故発生の可能性の高い沿岸部やマリンレジャーが活発化する時期及び海域を考慮し、また航空機はその高速性、捜索能力、吊り上げ能力等が最大限に活かされるよう効率的に配備されて、迅速な救助が必要な事案については、日本水難救済会等の民間救助団体、JASREP加入船舶及び海上自衛隊と連携し効率的な海難救助を実施している。
東京湾において、原油、有害液体物質や液化ガス等を輸送する船舶の衝突、乗揚、火災等の海上災害が発生した場合、迅速に対応し、また被害の拡大による二次災害を防止するため、災害対応機能を強化した巡視船艇を配備するとともに、特殊な資器材を整備し、海上災害に備えている。また対策本部等を設置し、地方自治体からの要請による職員・物資の輸送及び防災関係者の安全や防犯対策のために巡視船等を配備する。
特殊救難隊、機動防除隊は、海上保安庁の中で、第三管区にのみ置かれている組織で、全国各地の災害発生に際して、羽田航空基地の航空機を活用し、全国に展開する機動力ももっている。
横浜海上保安部所属PL109「しきね」
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横浜防災基地桟橋の横浜海上保安部所属PLH31「しきしま」
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下田海上保安部桟橋のPM13「かの」
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横須賀海上保安部桟橋のPM89「たかとり」
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- 第四管区
最近、コンテナ船に搭載されたコンテナに潜伏し、密入国を図る事案が急増しており、また、船舶を使用した大量の覚せい剤等の薬物及び銃器の密輸事犯も増加していることから、関係機関と連携し、これらの不法入国事犯や密輸事犯の水際での阻止に全力を挙げて取り組んでいる。
名古屋港では、名古屋港海上交通センターが港に出入りする船舶に対し、航行管制と船舶の動静などの情報提供を行っている。
伊良湖水道は、伊勢湾の玄関口である渥美半島の伊良湖岬と神島の間にある狭水道で伊勢湾・三河湾に出入りするほとんどの船舶はここを通航しているため、伊良湖水道に航路を設け、特別のルールを定めている。
また、このような海域を船舶が安全に航行できるよう、陸上レーダーなどを利用して船舶交通の状況を常に把握し、きめ細かな情報提供と航行管制を一元的に行える「伊勢湾海上交通センター」を、平成15年度に運用開始した。
伊勢湾常滑市沖では、中部国際空港建設のため、大規模な海上工事が実施されているため、工事海域付近は、多数の船舶が航行しており、一般船舶及び工事作業船の安全確保のため、巡視船艇で指導警戒にあたっている。
第四管区海上保安本部では、巡視船「いすず」を救難強化巡視船に指定し、海難発生時には「潜水士」などを派遣して、迅速な人命救助活動にあたっている。
伊勢湾一体では、大規模な工業地帯を抱えるため、原油タンカーによる大規模油流出事故や危険物輸送船などによる船舶火災、あるいは石油基地、LPG・LNG基地等施設の事故による海上災害が発生した場合に備え、被害を最小限に止めるよう消防船艇、オイルフェンス展張艇等の防災資機材等を管内に配備し、常時出動体制をとって迅速かつ的確な対応を実施している。
また、事故による海上災害の発生に備え、県及び関連企業等で構成する「伊勢湾流出油災害対策協議会」を設置し、毎年、官民合同の流出油防除訓練を実施するなど大量流出油事故等防災体制の充実に努めているほか、危険物輸送船などの事故を未然に防止するため、荷役時における安全対策の指導や定期的な一斉点検を実施している。
平成11年8月 東チモールの特別自治に対する直接投票を巡り治安状況が急激に悪化する中、現地にいる邦人等が安全に退避するための輸送に備え外務省の要請に応じ、海上保安庁では、巡視船「みずほ」を派遣し、東チモールのディリ沖に待機させた。
また、平成11年9月21日に発生した台湾大地震の被災者救助のために派遣された国際緊急援助隊に巡視船「いすず潜水士」2名が参加し、国際貢献に寄与している。
海上保安庁では、「アジア海上セキュリティ・イニシアチブ2004」に基づいたアジア各国との海賊及び海上テロ対策に関する相互協力及び連携の推進・強化策の一環として、アジア周辺海域に巡視船等を派遣しているが、平成16年10月には、第四管区海上保安本部から「巡視船みずほ」を同海域に派遣し、連携訓練を行うとともに所要の哨戒を実施している。
名古屋海上保安部所属PLH21「みずほ」
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- 第五管区
第五管区海上保安本部は、兵庫(日本海側を除く。)、大阪、滋賀、奈良、和歌山、徳島及び高知各府県の区域、並びにその沿岸水域を管轄する海上保安庁の地方機関として、昭和23年5月1日に神戸海上保安本部として設置され、昭和25年6月1日の組織改正による管区制の採用により改称された。
管区内には、阪神工業地帯や、関西空港、台風街道と言われる土佐沖を抱えており、防災、警備、救難に備えている。
平成16年10月1日、和歌山県における海上保安業務執行体制の強化及び関係機関との円滑な連携を図るため、全国では14年ぶりとなる和歌山海上保安部が発足した。密輸・密航の水際対策、地震・津波対策、タンカーバース、LPGバース等の危険物関連施設に対するテロ対策・防災対策等の強化が図られます。また、船舶交通が輻輳する紀伊水道における海難救助等への対応能力がさらに高まることが期待されている。
また、平成16年10月1日、海上保安業務を担う「関西空港海上保安航空基地」が発足したが、この海上保安航空基地は海上保安庁初の、空と海が一体となった組織で、航空機とともに巡視艇なども配備されている。
高松海上保安部桟橋のPC15「くりなみ」
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- 第六管区
第六管区は、瀬戸内海を主な担当海域としている。
管区制となる前の広島海上保安本部当時は、中国地方の管轄として日本海側も受け持っていたが、昭和25年6月1に管区制がしかれた際、第八管区に担当を引き継いでいる。
石油コンビナートや、原子力発電所などのエネルギー関連施設、自衛隊基地、などが多く、災害対策、警備などに備えている。
瀬戸内海を東西に伸びる航路、中国四国を南北に結ぶ航路が交差する、過密航路を航行する船舶の安全を確保するために、備讃瀬戸海上交通センターと来島海峡海上交通センターを設置して航路管制、情報提供を行っているほか、常時巡視船艇を配備して海上交通センターと連携しながら通航船舶の交通整理等を実施している。
瀬戸内海には、数多くの石油・危険物基地があり、これらの基地に出入りする船舶が多数航行しているため、事故等による海上災害に備え、各種防除機材を配備し、官民一体となって海上防災体制の充実に努めている。
管内各地に「排出油の防除に関する協議会」、併せてこれらの協議会が合同で防除活動を行うための「排出油防除協議会連合会」を設立し、関係機関、民間団体が一体となって海上防災活動に取り組んでいる。
測量船「くるしま」により海洋環境保全のための水質調査を行っている。
呉海上保安部所属PL21「こじま」
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- 第七管区
第七管区海上保安本部は、本部を北九州市門司区に置き、福岡、佐賀、長崎、大分の各県と山口県西部を管轄し、それらに接続する日本海西部及び東シナ海を担任海域としている。
管内には、米軍基地や自衛隊基地などの重要警備拠点のほか、韓国との海の国境が接しており、海上警備取締りが大きな任務となっている。
その昔、いわゆる李承晩ラインにおいては、巡視船艇による、文字通り体をはったわが国漁船の保護は、記憶にとどめおくものである。
平成13年11月9日、米国同時多発テロに関連し海外派遣される自衛艦3隻の佐世保港出港では、市民団体等が分乗した抗議船による海上デモが行われたが、第七管区海上保安本部国際テロ警備本部では、佐世保港及び付近海域において海上警備を行い、混乱等もなく、自衛艦3隻ほ予定どおりインド洋向け出港させている。
我が国排他的経済水域内の漁業等禁止海域である対馬東水道においては、韓国漁船による不法操業も多く、「排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律」にもとずいて対処している。
また、関門海峡においては、船舶輻輳海域でもあり、関門海峡海上交通センターを設置して海上交通安全を図っている。
北九州などの工業地帯の防災も、大きな任務である。
管区内には原油、LPG、LNG、ケミカル類の基地が点在し、これらの危険物が船舶により大量に輸送されていいる。また、危険物積載船舶による衝突、乗揚げ等の海難は、大量の油の流出、海上火災あるいは爆発などの大きな海上災害になる恐れがあり、日頃から万全の対策を講じておく必要があるため、管内11地区に所在する排出油防除に関する協議会の活動海域の広域化を推進するとともに、各自治体など関係機関との合同訓練を実施するなど、官民一体となった油防除に関する協力体制の構築に努めている。
また、大規模な自然災害が発生した場合、地方公共団体その他関係機関と密接な連携のもと巡視船艇・航空機を出動させ、被災者の救出、人員・救援物資の緊急輸送などの災害応急活動を行う。
管区内の海岸線は総延長6千Kmに及びその大部分が優れた自然の景勝地として自然公園に指定されている。
これらの美しい自然環境を守るため、巡視船艇・航空機により、船舶からの油の違法排出、臨海工場からの汚水の違法排出、廃船・廃棄物の違法投棄といった、悪質な海洋環境事犯に対して監視取締りを強化し、海洋環境の保全に努めている。
また、マリンレジャーの活性化に伴い、ビニール製品、空き缶などのゴミのポイ捨てや不要となったプレジャーボートの放置による汚染が社会問題となっているため、管内各地で活躍している「海洋環境保全推進員」の協力を得て、パンフレット、リーフレットを配布したり、また、海洋環境保全講習会の開催や海洋汚染防止のためのパネル展示などを通じ、一般市民に対する海洋環境保全思想の普及・啓発活動を積極的に推進している。
平成2年5月に締結された日韓海難救助協定により、第七管区海上保安本部は日韓両国の周辺海域における捜索救助活動の実施及びその際の相互協力、緊急避難船舶の保護等についての日韓間の連絡窓口となっている。
また、日韓の連携強化を図るため平成11年10月に、日韓海上保安機関初の合同救助・防除訓練を韓国釜山で実施し、翌平成12年9月には、関門海峡東口海域において第2回目の訓練を実施しています。
さらに、平成13年4月、韓国海洋警察庁東海、釜山、済州海洋警察署との間に地域関連窓口を設定し、海上犯罪、海難、海洋汚染等に関し、迅速な情報伝達が確立されている。
福岡海上保安部所属PL05「はかた」
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門司海上保安部所属PM81「きくち」
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佐世保海上保安部所属PM90「ちくご」
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- 第八管区
第八管区海上保安本部は、昭和23年5月に舞鶴市に創設され、福井県、京都府、兵庫県(豊岡市、城崎郡、出石郡及び美方郡)、鳥取県、島根県の区域並びにその沿岸水域(日本海)を管轄区域としており、管轄する海岸線は約1,800キロメートルにも及んでいる。
管内には、風光明媚な国立公園や国定公園が数多くあり、春から秋にかけては穏やかな日が続き、多くの観光客や水上オートバイ・ダイビングなどのマリンレジャーを楽しむ人で賑わうが、冬には一転して猛烈な季節風が吹き荒れる日が続く。
こうした中、巡視船艇や航空機などを使って、海の安全を確保するための業務を行っている。
また、この海域は、韓国・北朝鮮・ロシアの国々と接しており、外国船舶の往来も多いため、こうした船舶の監視を行うとともに、我が国の領海及び排他的経済水域(EEZ)内での密漁取締りや、密輸・密入国を防ぐための警戒を行うなど、いわゆる国境管区としての業務も行っている。
周辺海域においては、近隣国により我が国漁船がだ捕等される事件も発生しているため、巡視船艇等により我が国漁船がトラブルに巻き込まれないように監視指導に努めている。
近年クローズアップされた不審船に対しては、関係機関と連携をとりながら、巡視船・航空機により不審船の警戒を行っているほか、海上自衛隊舞鶴地方隊のと共同訓練も行っている。
核物質の海上輸送や、外国艦船の我が国への寄港などに伴う紛争等に関連し、海上における公共の安全と秩序の維持を図るための警備をしていいる。
平成13年9月11日に発生した「米国同時多発テロ」以降、管内の原子力発電所等の重点警備対象施設に対する警備も強化している。
第八管区海上保安本部管内では、平成9年に発生したナホトカ号油流出事故など大量油流出事故が発生しており、これらの海上災害事故に対応するため、油回収装置、オイルフェンスなどの防災資機材を配備し常に出動できる体制をとっている。
平成12年9月にロシア連邦国境警備庁(当時)と、また、平成13年4月には韓国海洋警察庁東海海洋警察署との間に地域関連窓口を設定し、海上犯罪、海難、海洋汚染等に関し、迅速な情報伝達体制を確立している。
境海上保安部所属PLH10「だいせん」
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舞鶴海上保安部所属PS202「ほたか」
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- 第九管区
第九管区海上保安本部は、事務所を新潟市に置き、新潟県、富山県、石川県及び長野県の区域並びこれらの沖合い水域、山形県、秋田県及び青森県沖合いの中部日本海の海域を管轄している。
昭和60年頃から、能登半島北西沿岸の領海線付近に、韓国あなご籠漁船が度々出没するのが確認されるようになり、これらの中には領海内で違法操業する漁船もあることから巡視船艇・航空機により厳重な取締りを実施し、多数の韓国あなご籠漁船を検挙した。
平成4年2月食糧援助等のためロシアへ緊急支援物資の輸送計画が策定され、巡視船「えちご」がその任にあたった。これは当時の政府が決定した無償援助の供与で輸送物資はコンビーフ、砂糖、コンデンスミルク、医薬品、注射器などで、これら約22トンの物資を載せて新潟西港を出港、ウラジオストクへ輸送するというものであり、九管区では突然の出来事であると同時に前例のないことのため、仕事を分担し職員一丸となって出港準備にあたった。
平成9年にはナホトカ号海難・流出油事故、これに引き続きユワカマルの木材流出事故が相次いで発生し、九管区をあげて、この処理の任にあたり、総理大臣表彰を受賞した。
北朝鮮からの船舶が多く寄港する新潟港においては、拉致問題を含めて緊張状態が続いており、特に「マンギョンボン号」寄港にさいしては、該船の警戒とともに、船舶検査を行うなど、大きなテーマとなっている。
新潟海上保安部所属PLH08「えちご」
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新潟海上保安部所属PS201「つるぎ」
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- 第十管区
第十管区海上保安本部は、鹿児島、熊本及び宮崎の3県とその周辺海域を管轄区域とし、南九州周辺から東シナ海に及ぶ南北約700キロメートル、東西約1,000キロメートルの広大な海域を担当している。
この海域には、大小九百有余の島嶼が散在し、温暖で美しい海を擁している一方、台風の常襲地帯であるほか、南北に西日本火山帯が縦走しており、桜島や離島に活発な火山活動が見られるなど、自然環境の厳しい地域でもある。また我が国と近隣諸国を結ぶ資源輸送の大動脈となっており、特に大隅海峡は国際海峡として内外の大小船舶の往来が活発である。
そのほか、この海域は黒潮と複雑な海底地形により好漁場を形成し、漁船 の活動が活発であり、また、磯釣りやスキューバダイビング等のマリンレジャーの進展もめざましいものがある。
そのため、密漁監視や、海難防止なども、大きな任務のひとつである。
平成13年12月22日発生した、九州南西海域不審船事案では、管区の串木野海上保安部 巡視船「きりしま」と、名瀬海上保安部(当時所属) 巡視船「あまみ」が追跡を行い、特に「あまみ」は船橋に多数の銃撃を受けながらも、不審船の自沈により、逃走を阻止したことは、国民の記憶に新しいものである。
鹿児島海上保安部所属PLH03「おおすみ」
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- 第十一管区
第十一管区が担当する海域の中には、台湾・中国が領有権を主張している尖閣諸島を含んでおり、また沖縄周辺海域は海上輸送の主要な航路となっていることから、これらの特徴を踏まえて治安の維持のために、尖閣諸島周辺をはじめとした領海警備、銃器・薬物の密輸事犯の取締り、不法入国事犯への対応、特殊警備事案への対応などに重点がおかれている。
尖閣諸島は、我が国固有の領土であるが、その領有権を巡り同諸島周辺は微妙な国際問題をはらんだ海域となっている。第十一管区では巡視船を常時配備し、また、定期的に航空機を哨戒させ厳重に領海警備を実施している。
薬物・銃器の密輸や密航は、我が国の治安に重大な影響を与えている。十一管区が担当する沖縄周辺海域は中国、台湾、東南アジア諸国からの密輸・密航のルート上にあるといわれ、実際に大規模な密輸・密航事案が発生しているため、我が国の平和・秩序・安全を守るために密輸・密航などの犯罪を海上で未然に食い止め、水際で摘発するため、巡視船艇、航空機によるパトロールの強化、積極的な情報収集活動、警察、税関等の関係機関との連携の強化等を図っている。
十一管区が担当する沖縄周辺海域は、海上輸送の主要な航路であり、また、中国、台湾、フィリピンと隣接していることから外国船舶を含め各種船舶が多数航行する海域となっているため、過去に通行船舶が銃撃される事件や、船内暴動事件等の特殊な警備事案が発生している。
離島が多いため、急患輸送も多い。これは、十一管区の航空機や巡視船などを使って、離島から石垣島などの病院へ病人やけが人などを運ぶ仕事です。いわば、海を渡る救急車である。急患輸送は、第十一管区海上保安本部長と沖縄県知事の間で「沖縄県内における急患輸送等の援助に関する申し合わせ」に基づき、巡視船艇・航空機により急患の輸送、緊急医療要員及び医療器材の輸送を行うもので、現在は、主として石垣航空基地に所属する航空機により、24時間体制で宮古・八重山地区の離島で発生した急患の輸送を行っている。
尚、これは、昭和47年2月4日からの琉球政府厚生局石垣医療航空事務所時代に遡る業務で、沖縄の復帰後、同組織は、第十一管区海上保安本部石垣航空基地に生まれ変わっている。
管区海域には、多くの米軍基地のほか、米軍の訓練海域が多くを占めており、警備と共に、海洋情報の提供による、事故防止にも努めている。
那覇の第十一管区海上保安本部所属PLH09「りゅうきゅう」
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新規作成日:2005年5月7日/最終更新日:2005年1月18日